当サイトでは全国各地の親鸞聖人像をアーカイブしていますが、今回は別の視点から情報をお送りします。
5年前から、伝統宗派の僧侶や寺院、新宗教、さらには最近急増しているAI生成チャンネルまで、約500件の仏教系YouTubeチャンネルを対象に、登録者数や更新状況などをもとに独自に整理し、その推移を継続的に記録してきました。これまでは僧侶仲間との内部資料として活用してきましたが、更新の自動化を組み込めたことを機に、上位100チャンネルを同サイトに一般公開しました。
仏教YouTubeの変遷
コロナ渦に急増した仏教系YouTube。当初は個人の僧侶が急増し、組織にはないスピード感で広がりを見せ、その中で一部が頭角をあらわしていきました。新宗教も早い段階から動画コンテンツに注力し、着実に地歩を固めています。伝統宗派の教団はスロースターターでしたが、今後、組織的な長期戦での強みを発揮していくかもしれません。
特筆すべきは、去年から急増している「AIチャンネル」の存在です。台本づくり、動画編集、運用までをシステム化し、成長したチャンネルを売却する事例も見られるなど、ビジネスモデルとして運用されているケースもあります。2026年はさらに急増していくことが予想されますが、こうした動きは、仏教的な語りや世界観に触れたいと感じる人々が一定数存在し続けていることを示しています。
スタープレイヤー・組織力・AIの寡占化
登録者数の多いチャンネルに注目すると、音楽とお経の融合で登録者100万人を超えた薬師寺寛邦さん(臨済宗)、一問一答形式で現代人の悩みに直接応える大愚和尚(曹洞宗・単立)、怪談説法という独自の切り口で人気を博す三木大雲さん(日蓮宗)をはじめとする、上位10名のスタープレイヤーが、総登録者数の約4割を占めています。
次いで、強い組織力を背景とする創価学会系チャンネル、さらにシステム化されたAI生成チャンネルを加えると、その割合は全体の約6~7割に達します。約500件を対象にした統計からは、個人の突出した表現力と、組織的・システム的な運用が視聴者の大部分を占めるという、二極化した構造が浮かび上がります。
浄土真宗のYouTubeチャンネル
同サイトに関連する浄土真宗の状況は、チャンネル数では圧倒的に多いのですが、登録者10万人を超えるような突出したチャンネルはありません。これにはいくつかの理由が考えられます。
教えの特性
仏教関連の動画でよく視聴されているのは、「悩みが消える」「運気が上がる」などの現世利益的な即効性を提示している動画があります。しかし、浄土真宗の教えはその対極にあります。「自分の力でどうにかしようとする発想」から離れ、阿弥陀仏の慈悲に身を委ねるという他力の教えは、「自分の力で現状を変えたい」という直接的な欲望と噛み合いません。また、独自の解釈や安易な意訳は好まれず、親鸞聖人が示された言葉の重みを守ろうとする姿勢が、コンテンツとしての「軽やかさ」や「キャッチーさ」を抑制します。
組織の特性
浄土真宗は諸宗派と比較して特に寺院数の多い宗派です。寺院の密度が高く、同業者や門徒による「まわりの目」による自己規制がはたらきやすい環境です。表現の受け取り方によっては、意図せず「逸脱」と見なされるリスクが生じやすく、必然的に表現は安全で保守的なものになります。そして、組織として教義の正確性を重視するため、バズを狙った過激な演出や、個人の主観による大胆な発信が生まれにくい構造があります。
内向きな言葉
浄土真宗は法話への重点が高く、長い年月をかけて構築された独特の言い回しがたくさんあります。それらを現代風にわかりやすく「言い換える」努力は不可欠ですが、すべてを世俗的な言葉に置き換えてしまえば、その教えが本来持っている深みが削ぎ落とされてしまう場合があります。その葛藤が、伝わりにくさを生んでいると言えます。
これらは短期的に見るとデメリットですが、長期的に見ると、変わらない温もりを感じ取る人もいると思います。即効性が求められる時代だからこそ、安易に消費し尽くされない深みとして受け取られる余地があると言えるでしょう。