恨(こん)

だれだって、負けたら、ハラが立ちます。そのハラ立ちの心が高じると、この恨みというやつになりまして、うらめしやーなんてのは通り越しちゃって、子々孫々、末代に至るまで、ということになるみたい。

うちの近くで、イワシとタイで十五年、というケースがあります。

お母さんがお魚屋さんで、安くて栄養たっぷりのイワシを買おうとしたんですって。そうしたらお隣の奥さんが、横でちょっとつぶやいた。「何かおいしいおさしみないかしらン」。お母さんムッときたのか、イワシをさした指をグッとタイの方に向けて「これちょうだい」。

その夜の食事は、お母さんの恨みつらみの独演会。その息子が十五年たって、明かした衝撃の告白はーーー「以来、俺は学校で成績悪くても、隣りの子に勝ったといえば、おふくろニッコリ」だったそうです。

ヤーな事だけどこれが本当のわたしの姿。