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昭和52~53年にかけてサンケイ新聞婦人面に掲載された「お茶の間説法」の文章です。
「女人に五力あり」-これは増一阿含経というお経の中にある言葉なんですが、女性が一生懸命に力を入れることには五つもあるんですって。男はたった一つ「名利」だけといっといて、女には五つなんて、ずいぶん不公平だと思うんですが、まあ、それはさておき、あなたが毎日、あるいは一生かかって、求めてやまないものは、いったい何なのか、ちょっと考えていただきたい。
そう、考えていらっしゃる間に、別の話をいたしますが、先週、男は名利、なんやかやいってみても、偉くなりたいのが男の願いなんだと申しましたら、この欄を読んでた男の人が電話をかけてきて下さって、自分は50に近い男だが、いままで、名利を願ったことは一度もない。まわりはみんな、偉くなろうと一生懸命だが、そんなのはバカなことだと思うーーーとおっしゃる。ずいぶんカッコいいんです。
そこでまじめに聞いてみたんですが、自分は偉くなりたいなんて思わないっておっしゃるけど、俗世間の修羅場に超然としていることが、あなたの求めている”偉さ”じゃないのかしら? 男は名利、あるいは富貴ーーーつまるところ、五十歩百歩なんじゃないですか。ともに凡夫のみなんですよ、申しあげた。ウーム、電話の向こうはちょっと考え込んでいらっしゃる様子でした。
さて、あなたの方はいかがですか? 求めてやまないものは一体何なのか。ベスト5決まりましたか? それでは、いってみよう。今週のベストワン!(コラッ浮かれ坊主!!)
ま、とにかく心静かに仏様のおっしゃることを聞いてみましょう。女人に五力、その第1番は「色力」なのだそうであります。色力、色香、つまり”美しくありたい”というのが女性の第一番の願いである、と仏様がおっしゃるのです。当たっているか、いないかは、男の私にはわかりませんが、そばから見ていて、力が入っていることは事実ですね。子供の教育が1番という顔をしているお母さんも、PTAの会合に出かける前には、まず身だしなみですね。化粧品だってファッションだって、とにかく、こんなに沢山あふれかえっているというのも、じつは、美しくありたいというのが女性の一番の願いだからでしょう。
でもね、こないだウチのお寺でこんな話をしていたら、前にすわっていたおばあちゃんにしかられましてね。
「若ハン(若院、つまり私のこと)おかっしゃい(おやめなさい)わしゃいま86。色気もなんもありゃせんちゃ」
と、おっしゃる。そこで、そのおばあちゃんに問い返してみた。
「なら、おばあちゃん、ちょっと聞くけどあなた、今日この寺へ来る前に、家で何を着ていこうかな、何を履いていこうかな、なんて思わなんだ?」
すると、その86のおばあちゃん、ポッと顔をあからめて、「ありゃりゃ?!」
80であろうが、九十であろうが、女の願いの第一番は、美しくありたい、ということなんじゃないでしょうか。いいですね。素晴らしいことだと思います。
あ、そうそう、この欄、男の人も読んでいるのでいっておきますが、いいですか、女の色力、ゼッタイに傷つけちゃいけませんよ。
「お茶の間説法」(37話分)
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