バリア

ほんこさまが始まりました。ほんこさまは、正確には在家報恩講といい、親鸞聖人のご法事を各ご家庭でつとめる行事です。一年ぶりの方も、時折り顔を合わす方も、ホームへお迎えする側として、お寺で会う時とは少し雰囲気が違います。おつとめの後には少し談笑の時間があり、その時その年で話題は変わりますが、こちらが何かを伝える以上に、教えてもらう機会も多いです。

あるお宅では、長く営業のお仕事をされていた方に、お寺の行事のチラシを渡してこんな質問をしてみました。

「こういう行事をどうやって宣伝したらいいですか?」
その方の経験談を聞かせていただく話の流れで、
「なるべく嫌がられたくないんですよね~」と言ったところ、

そりゃ、あなたが勝手にバリアをはっとるがいにけ。自分がバリアをはったら相手も二枚も三枚も、もっとバリアはるちゃよ。それじゃあ熱意は伝わらんよ。

勢いに押されながら、ハッとしました。さすが百戦錬磨のベテランは説得力があります。何よりも熱意を伝えることが大事と改めて教えてもらいました。気弱な私はついつい、嫌われたくないなぁ、煙たがられたくないなぁと自分からバリアを貼って、相手との距離を余計に空けてきたのかもしれません。絶えない仏さまの灯火を私が消していました。定例行事はお寺の要です。これがなければお寺の存在意義は失うということを、熱意を持って伝えていきたいです。

雪山俊隆(寺報182号より)
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