自分の欲深さには、気付かない

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昭和52~53年にかけてサンケイ新聞婦人面に掲載された「お茶の間説法」の文章です。


人は多く自覚症状のない心の病気にかかっている-のだそうです。わたしがこんなこといったら、えらそうにお前も人じゃないかといわれるので、ことわっておきますが、これはお悟りを開かれたおしゃかさまのことばなんです。

ちょっと気になりますね。心の病気・・・いろいろあると思うんですけど、自覚症状がないとおっしゃるんだから、私達が気付いて改めることも出来ないし、治すことも不可能であります。といって放っておいたら、病状はますます悪化して、ついて手のつけようのないことになるかもしれない。

そこで、とりあえず、その病気とはどんなものなのか、ということを、医王ともいわれるおしゃかさまにお聞きして、心の健康診断をしていただこうと思うわけでありますが…、あ、そうそう、その前に、身体の病気は大丈夫ですか?こちらは、どんな時でもお医者さんにみてもらって下さいね。よく、身体の病気の方もお医者さんにみせないで、わけのわからない人にみてもらって、チチンプなんてやってる人あるけど、ありゃおかしいよ。いや、気持ちはわかりますけど、チチンプイで身体の病気が治るんなら、お医者様はいらないわけだし、そのチチンプイの人だって病気で倒れることあるわけだから、気休めならまだしも、目の色かえて、とびつくものじゃないと思うんです。

その点、おしゃかさまという方は、今でいうなら、とても科学的な方でありまして、
「病気になったら、医者にゆけ」
とおっしゃって、ご自分でも、風邪を引いたりなさったときは、神通力や念力で治すなんてことしてません。ちゃんと、お経にも出てますけど、素直に「医者をたのむ」とおっしゃってます。

さてさて、心の診断、その1であります。
自覚症状のない心の病気の第一は、いったい何かといえば、お経には「欲貧これなり」と説いてあります。欲貧-欲とむさぼり。ひっくり返せば、貪欲であります。こいつに私達は心のすみずみまで犯されていて、手のつけようがない。そして、さらに困ったことには、本人がそれに気付いていない、とおっしゃているんです。

いかがですか?欲に迷っていませんか。毎日、貪っていませんか。この貪欲の心というのは、自分の好みに合ったものに出くわすと、必ずムラムラとわいてきて、みさかいがなくなる、というおそろしい心の病気なんですと。うまいものならもう一杯。気に入った人ならいつまでも。欲望を満たしてくれるおカネなら、それこそもっともっといくらでも・・・。

しかし、どうなんでしょう。貪欲は心の病気なんてこと、いまさらいわなくったって、ちゃんとわかっていたことじゃないですか。でも、そうすると、おしゃかさまは、どうしてわざわざ、自覚症状のない心の病気の第一に、この貪欲を持ち出してこられたんでしょうね。

そこで、もう一度、自分の心の奥底を見直してみなくてはいけないのですが、どうやら、私達、わかったような顔はしていたけど、気がつく欲や目につく貪りは、すべて他人の貪欲で、そっちはイヤラシイと軽べつしながら、自分の欲深さには、トンと気がついていなかったんじゃないかしら?


「お茶の間説法」第一巻(37話分)はこちらからどうぞ。
>> http://www.zengyou.net/?p=5702