みんな賢くなりすぎて

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昭和52~53年にかけてサンケイ新聞婦人面に掲載された「お茶の間説法」の文章です。


ツーといえばカー、QといえばA。近頃、世の中、親切な人が多くなって、電話一本、ハガキ1枚で、どんなことにでも答えてくれる時代のようであります。人生相談、もめごと相談、心配ごと相談、人権相談、教育相談、育児相談、お料理相談、冠婚葬祭なんでも相談といった具合で、まあ、本当に便利な世の中ですね。

私もそのあおりをうけて、ひょいと遠くから、電話で質問されたり、手紙をいただいたり、なかには、うちの寺へこられたり・・・なんてことがよくあるんです。で、結果はうまくいくかといえば、これがまるで話にならない。Qとくれば、A、となればいいんだろうけど、私のはそうはいかない。Qと問われた問題を、さらにややこしくして、Qのまま返してしまうということが多いんです。Q&Aじゃなくて、Q&Q、になっちゃうんです。

こないだも、こんなことがありました。
電話の奥さん「モシモシ、あの、雪山さんですか?私、サンケイ新聞で拝見しているものなんですけど、ちょっとおうかがいしたくって・・・」
―どんなことでしょう?
「それが、じつは、娘の結婚のことなんですけど・・・私は賛成だし、相手も乗り気だし、うまくまとまればと思いまして、ついこの間あるところで見てもらったんです。そしたらなんと、この縁談はダメだ、不幸になるに決まっている、なんておっしゃいまして、私、どうしていいかわからなくなりまして・・・」
―それで?
「ええ、ですから、そんな占い師のいうことなんか信じなくていいかどうかと・・・」
―あなたはどうしたいんです?
「ですから信じたくないんですけど・・・」
―じゃあ、それでいいじゃありませんか。
「でも、占い師のいうことですし・・・」
―それならもう一度その占い師のところへ行って「あなたのいったこと信じたくありません」といってらっしゃいよ。私はあなたの顔も見てないし、娘さんのことも知らない。相手の男性がどんなハンサムかも知らない。電話一本で聞かれたって何もわからない。もちろん占いなんてものは、バカみたいなもんだけど、それを私があなたにいったら、あなたは、先の占い師を捨てる道具に私を使うでしょう。どっちにしてもバカバカしい。そんなことより、ご主人と娘さんと、みんなでよく相談なさったらいかがですか?

とまあ、こんな具合になっちゃって、相手の奥さんの聞きたいこともわかるんだけど、ごめんなさいって電話切ったんです。ずいぶん不親切な男だと思われたかも知れないけど世の中には親切な人がたくさんいるんだからやさしい答えがほしい方は、そちらへどうぞといっておきましょう。

ところで、このとき、ふと思ったんですけど、近頃の相談ブーム、こりゃあいったいどういうことかと考えるに、どうやら、日本中だれもかれも、かしこくなりすぎちゃったんじゃないか、と思うんです。つまり、そこら中からおだてられて、私達みんなうぬぼれのかたまりになっちゃって、ちょっとわからないことや、困ったこと、まわりの人にちょっと頭下げて聞けばいいのに、わからないということ知られるのがはずかしくって、こっそり電話やハガキで見ず知らずの人に聞いて、あとくされなくして、すましているんじゃないかしら。ねえ、そうじゃなあい?


「お茶の間説法」(37話分)
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