どの花が好き?

文化庁と北陸三県が連携した「とやま工芸ツアー」の団体をお迎えした折に、天井画制作者の清河恵美さんへこんな質問がありました。

「どの花が一番好きですか?」

善巧寺の内陣天井画は、二十八種類の花木が描かれています。その中で、描かれたご本人はどの花が特に思い入れがあるのか知りたかったのでしょう。清河さんはこう答えられました。

どれが一番というのはありませんよ。どの花もそれぞれに素晴らしいです。

一枚一枚、精魂込めて描かれている清河さんだからこそ説得力のある言葉として響きます。そして、極楽浄土が説かれる阿弥陀経の有名な一説「青色青光 黄色黄光 赤色赤光 白色白光」を思い起こされます。青色の花は青のままに光輝き、黄色の花は黄色のままに光輝き、赤い花は赤いままに光輝き、白い花は白いままに光輝いている。どの花も優劣はなく、それぞれに光輝いているという仏さまの眼差しです。清河さんはさらに続けてこう言われました。

花はそもそも人のために咲いているんじゃないんです。虫のために咲いてるんですよ。

このお答えにさらに唸りました。道理にかなったお答えであると同時に、自分視点ではなく、花の視点で答えられたことにハッとさせられました。仏教でも仏さまの視点を知らされることによって、自分中心の私の姿が浮き彫りになってきますが、まさにそのような言葉として聞かせてもらいました。

雪山俊隆(寺報166号)