お参りでいろんな方にお会いする中、ここ1年で最もよく聞いた話は「最近の世の中は狂ってる」でした。どれも、異常犯罪の報道を受けての話ですが、本当のところはどうなのでしょうか。
警察庁から発表された犯罪統計では、平成19年の殺人認知件数は戦後最低を記録したそうです。これは昭和中期の半分以下という数字です。この統計は、どのマスコミも取り上げていないようで、これこそが異常なことです。では、なぜマスコミは異常犯罪をくまなく拾い上げるようになったのでしょうか。それは言うまでもなく、視聴率が取れるからでしょう。同時に視聴者である私自身を指していて、人間の1番汚い心をえぐられているようで、情けなくなります。
また、少し前には、ひとつの事件をきっかけに飲酒運転事故のニュースが急増しました。これに関しても、警察庁の統計資料を10年単位で見てみると激減しています。もちろん、正すべきことはたくさんあるとは思いますが、指をさすのは、犯罪者でもなく、マスコミでもなく、まず自分自身に指を向けるという仏教的視点が大切なのではないでしょうか。
産経新聞の社会部記者だった父隆弘の口ぐせは、「マスコミは99.9%ウソ」でした。その父が仏教に出会い、そのまま聞いていい教えがあったことに感動したのです。これは、その他にはそのまま聞くものは何もないと知った人の喜びでしょう。
闇の中でいくらもがいても闇は晴れません。仏の教えに耳を傾けてくださる仲間がひとりでも増えることを切に願っています。
(寺報127号)