カッカしそうになったら・・・

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昭和52~53年にかけてサンケイ新聞婦人面に掲載された「お茶の間説法」の文章です。


スポーツの秋なんだそうであります。そこで、この欄もひとつ、茶の間を飛び出して、スポーツが3倍面白く、10倍は上達する方法なんてのを、仏様を仰ぎながら考えてみようと思うんです。

まず、近頃、お年寄りの間でブームになっているゲートボール。こわいですね、先日はとうとう殺人事件まで起きちゃった。でも、これ、当然だと思うんです。スポーツとか、勝負などというものから遠ざかっていた人が、久し振りに勝った負けたとやり合うんですからね。これまではおつき合いでニコニコあいさつしてたのに、ゲートボールとなると、そうはゆきません。

あ、そうそう、ご存じですか?ゲートボールというスポーツ。うちの寺の境内には、ちゃんとコートをこしらえてありまして、いつでもゲームが出来るようになっているんです。ゲートボールなんていわないで「門球競技」なんていっているんですが、要するにこぶし大のプラスチックの重い球を、しゅ木のうなツエでコツンとやる。3つの門があって、そこを通過して、ゴールの的に当てれば上がりという、いたって簡単なゲームなんです。

なかなか面白いので、日曜学校の子供たちやおじいちゃんおばあちゃん、それに私たち壮年層のおじさんグループも加わって、月例大会なんてのをやっているんですが、なんと全国には400万人の愛好者がいるといいますから、大変な人気といえるでしょう。

で、全国の公園や寺の境内で、お年寄りを中心にしてコツンコツンとやってるわけですが、ブームになったとたんちょっと評判わるくなった。なぜかというと、つまり過熱気味だというんです。どこのコートでもケンカが絶えないようなんです。

たかがゲートボールで、と笑う人もいるけれど、実際やってみると、これがかなりカッカとくるものでありまして、ゲームの最中に、気分よく次のゲートへ球を進めていると、相手の球がこれをジャマしにくるんです。カツンと他人の球に当てれば、その球をスパークといって、どこへでもぶっ飛ばすことが出来るというルールになっていて、これが、カッカのもとなんです。カツンと一発やられるとたかがゲートボールとわかっていても、頭を一発ぶんなぐられたような、全人格をふっ飛ばされたような、そんな気分になるんです。殺人事件が起きても不思議はない、そう思えてくるんです。ですから、うちの境内では、そんな危険のないように、ゲームの前後に必ずお説教をつけることにしています。

みなさん、これからたのしいゲートボールを始めますが、その前に、とっておきの上達法を伝授しておきましょう。まずなんといっても、上達法の第1は「ハラを立てないこと」であります。あのスパークとやらでカツンとやられると、頭に血がのぶるに違いない。しかし、そこでハラを立ててはいけません。ぐっとガマンしなくては上手になれません。これはどんなスポーツにも通じる鉄則です。しかし、そんなことをいってもわれら凡夫、ガマンができるわけがない。そしたらどうするか、そうです、仏様を仰いでわが心をみつめてみる。なんと、なんと、たかがゲートボールのカツン一発で…。自分の気に入らないことにはすぐにハラを立てるのが人間だといわれるが、本当にそうだな-と、相手のスパークをご縁に味わっていただきたい。それではプレボール!


「お茶の間説法」(37話分)
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