仰ぐ対象

年寄りを いたわるばかりが 政治じゃないよ
生かして使えよ 老いの智恵

今年米寿を迎えた漫才師内海桂子さんの都々逸です。ここ20年ほどの間に目に見えていろんなことが変化しました。中でも、こどもやご年配者への接し方も変わってきたような気がします。

家族に財布がひとつだった時代は、一家の主はおじいちゃん。何かひとつ欲しいもの出来れば、家族会議をして、おじいちゃんの了解が必要だったと言います。そのおじいちゃんの決め台詞は「阿弥陀さんに聞いてみぃ」。そんなお宅は、今では日本のどこを探してもないでしょう。いつからか、核家族が当たり前になり、年配者は若い人に気を使い、若夫婦は子どもに振り回されているという、ほんの数十年で、価値観が全く逆さまになりました。これは、改めて考えると凄いことだとしみじみ思います。

昔が良かったというのではなく、何を失ったかという話です。ズバリ「仰ぐ対象」ではないでしょうか。「阿弥陀さんに聞いてみぃ」とスパッと言える人には敬いの対象があります。自分の物差しはじつに頼りなく、時代と共に変化していきます。変化は若い人のほうが柔軟に対応出来るでしょう。でも、そこには智慧がない。仏さまの物差しを改めて考える必要があるのではないでしょうか。

ご多分に漏れず、うちも子育て期間真っ最中。子供を中心に家庭がまわり始めていることを実感しながら、そんなことをふと思いました。

雪山俊隆(寺報137号)