繋がっている

今回の悲劇で亡くなった多くの方のことを想うと、ある部分、あるかたちで我々自身も亡くなったのだと痛切に感じます。人類の一部の苦しみは、全人類の苦しみです。また、人類と地球はひとつの身体です。そのひとつの身体の一部に何かが起きれば、全身にも起こります。

ダライラマ14世と並んで、平和活動に従事する世界的な仏教者ティク・ナット・ハン師が震災に寄せたメッセージの冒頭のお言葉です。すべてのいのちは繋がり合い、ただひとつで独立したものは何もないという縁起の法則を端的にあらわされています。

あなたの痛みが私の痛みとなり、あなたの喜びが私の喜びとなる。ゆえに救わずにはおれないという阿弥陀如来の願いを想います。親鸞聖人の時代にも大震災が起こり、長く飢饉が続いた後、大きな合戦が起こりました。当時と今とでは環境がまるで違うとはいえ、負の連鎖を危惧せずにはおれません。先の見えない不安がストレスを生み、そのストレスが知らぬ間に人にきつくあたってしまうことがあります。

親鸞聖人は怒りを消すのではなく転じるという生き方を示してくださいました。「教行信証」をあらわした原動力には、少なからず不当な弾圧に対する怒りがあったことでしょう。煩悩を抱えたままに、仏に照らされ生きる道。危機感や焦りや無力感を持った時にこそ、静かに問い直してみたいと思います。

雪山俊隆(寺報139号)