光陰矢の如し

ほんこさまの折に「1年はあっという間」という言葉をよく耳にします。40歳を手前にしてその気持ちがいよいよ実感となってきました。歳を取るごとに時間が短く感じるのはなぜでしょうか。

フランスの心理学者ポールジャネーによると、時間の心理的速度は年齢と反比例するとされ、10歳にとっての1年間は50歳の5年間に相当するそうです。2歳の息子の1年が私の20年分。日々新しい情報を新鮮に受け取り、刻一刻変化する我が子を見ていると、あながち言い過ぎではない説に思えてきます。

日々、処理し切れない膨大な量の情報に流されて、気休めや世渡りの情報ばかりを拾って、本当に大事なことを取りこぼしているのかもしれません。

「朝には紅顔ありて、夕べには白骨となれる身なり」
蓮如上人は繰り返し諸行無常を説かれました。平和ボケした時代に警笛を鳴らしているのではなく、天災や飢饉で賀茂川が死体で埋め尽くされていたという時代のことです。親や兄弟、夫や妻、我が子を亡くす人もいたことでしょう。生々しく諸行無常を感じていただろう人たちに向かって、念を押すように繰り返し語られました。無常であることを伝えるだけでは、ただ不安を煽るだけに終わりかねません。無常だからこその救い。南无阿弥陀仏のお救いが今あなたに届いているということを言わずにはおれなかったことを想うと、我が身を恥じずにはおれません。今年は善巧寺の大遠忌法要です。後悔しないよう勤めたいです。

雪山俊隆(寺報146号)