子や孫へ

9月からほんこさまが始まりました。ほんこさまは、正式には「報恩講」と言います。恩に報いる集い(講)ということですから、親鸞聖人のご恩に感謝する日であり、ひろげれば、聖人を大切にされた皆様のご先祖方に感謝する日とも言えるでしょう。ご本山、ならびに善巧寺では、親鸞聖人の祥月命日(1月16日)に「御正忌報恩講」が勤まります。それに先立って行われる報恩講が「お取り越し報恩講」、善巧寺では10月19日と20日です。さらに、ご門徒さんのご自宅でつとめる在家報恩講。先人の方々がいかに親鸞聖人を大事にされていたかということがよくわかります。

「前に生まれる人は後の者を導き、後に生まれる者は前の人をたずねよ」

たびたび法話でも引用される道綽禅師の有名なお言葉です。親鸞聖人はこのお言葉を引用されて、「如来のお慈悲を仰いで信じ敬うべきである」と締められてます。

地方においても核家族が多数になり、「家」の在り方が大きく変化しました。インターネットであらゆる情報が拾える昨今、情報収集能力だけなら、十代で子は親を抜くでしょう。そんな付け焼刃の知識ではなく、生きる知恵を私たちは先人から受け継がれてきました。私たちは、子や孫に何を残せるのでしょうか。二人のこどもに恵まれてから、そのことが頭から離れません。住職になり十五年ほど、振り返れば後悔や恥ずかしいことだらけですが、本当に伝えるべきことを腹に据えて、これからを考えていきたいです。

雪山俊隆(寺報153号)