変わらない凄さ

今年は祖母の3回忌と父の17回忌でした。父の遺した言葉や写真、映像は今もうちの家宝として残っています。その中で、著作「お茶の間説法」を朗読したテープがあり、これをうちの中だけに留めておくのはもったいないということで、去年からインターネット配信を始めました。すると、予想を超えて聞いてくださる方が多く、多い時では日に2000人以上のアクセスがあります。

戦後、それまでの価値観が崩れ去り、欧米に追いつけ追い越せでがんばってきた時代がありました。戦前の価値観を否定するということは、それまで大切にされてきたお寺や仏教も含められ、伝統や歴史が「古い」という一言でかたづけられました。核家族化もこの頃から始まり、家庭のあり方が大きく変わり、そういう中で育った今の若者は、必然的にお寺や仏教とも縁遠くなります。ただ、あまりにも縁遠くなったせいで、逆にそれが今新鮮なものとして受け取る人たちが出て来ました。

上辺の文化に覆いかぶされた国で、突然個性が謳われても無理難題。欧米への憧れも徐々に薄れつつある今、情報はテレビ・新聞からインターネットへ。私って一体なんだろう?という自分探しが一時流行りましたが、そんな中で、足元にあった仏教に興味を示す人たちが出て来てもなんらおかしな話ではありません。

お寺や仏教が、今の若い人たちにとって抹香臭いものではなく、むしろ新鮮な魅力をもった仏教の伝統として、好意的に受け入れられていると強く感じます。時代に左右されず「変わらない」教えが今目の前にあるということを再確認いたしましょう。

(寺報121号)