所信表明 2020

明けましておめでとうございます。
正月の善巧寺は、1日深夜0時の除夜の鐘にはじまり、午前6時から朝のおつとめ(修正会)、午前8時~午後3時頃まで「年頭参り」を行っています。

「年頭参り」とは、名前のとおり新年を迎えるにあたって初めてのお寺参りをすることです。通常の法要と異なり、決まった時間におつとめがあるわけではなく、それぞれの来やすい時間にお寺へ訪れ、本堂で手を合わせてから座敷へ移動してあいさつを交わす伝統的な行事です。各ご家庭や地域で伝承されてきた行事のため、お寺からは特に案内はしていません。その伝承が途切れつつある昨今、年々人の数は減っており現在は平成初期の半数ほどになりました。これは、年中行事の法要も同様で、世代交代がされないまま高齢化と過疎化が進行したため、必然的に減少傾向にあります。

数十年前からお寺の中では「お参りの数が減った」と口ぐせのように言われており、地域行事の中でも同じような状況にあります。人に来てもらうための努力や熱心なお誘いがない行事が衰退していくのは当たり前のことですが、現状維持のままで参加者に恵まれていた時代が長過ぎたゆえの嘆きの声です。一般の企業でも、自社の精魂込めた商品を必死に売るために「営業」や「広報」にかなりのウェイトを割いているように、お寺も同様に一般的な「当たり前」のことをしっかりとやらねばなりません。思えば、新規で起こしてきた行事は、いずれも必死に広報してきました。その際、原動力は内部の熱です。「ひとりでも多くの人に来て欲しい!聞いて欲しい!」という熱が行事を作ります。その視点から見た場合、現在のお寺はその熱が足りないと言わざるえません。義務的に協力してくださる方々は間違いなく善巧寺の支えになっていますが、そこに喜びがなければ広がりは生まれないでしょう。

一昨年から伝統行事の「お講」をリニューアルして再スタートした「ほっこり法座」は、法話を聞くことに重点を置いて、門徒や地域の有無を問わず、出来る限り広くに声を上げるように切り替えました。こちらも長く広報されていなかった定例行事です。まだ軌道に乗ったとは言い切れませんが、一歩手前までは来ていると実感しています。それに対して、年中行事の法要は、これまで門徒さんだけを頼りに踏ん張ってきましたが、今年からその方向性を変えていこうと思っています。

家庭や地域の伝承が途絶えた今、有縁の人びとを対象に、どなたも入りやすい環境を整えて声を上げていきます。その中にはもちろん、門徒さんも地域の方も真ん中にいます。今年は宗祖・親鸞聖人のご法事「報恩講(ほうおんこう)」の改革を目指します。浄土真宗寺院の根幹にあたる行事です。

いろいろと遠回りしましたが、その経験を糧に本丸に入っていきます。つきましては、ご縁のある方々にはぜひ、善巧寺の転換期にご注目いただきたく、本年もどうぞよろしくお願いいたします。

善巧寺住職 雪山俊隆

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