欠点だらけの人間だから・・・

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昭和52~53年にかけてサンケイ新聞婦人面に掲載された「お茶の間説法」の文章です。


「さわやかな朝、ラジオ体操のあとは、心の体操の時間です。毎週日曜日、お子さんと一緒に、お寺におまいりになりませんか?おいしい朝がゆも用意しております」
こんなうたい文句で、今年の夏休み、早朝日曜学校をはじめてみました。子供達にまじって、おばあちゃんやら、お父さん、お母さんも・・・50人ほどの集まりです。そこで私は、こんな話をするんです。

お早うございます。さわやかな朝ですね。ラジオ体操をしただけだと、口やノド、それにおなかもなかなか目をさましてくれませんが、そのあとこうして大きな声で、仏様の前でおつとめをすると、もう、すっきり、さわやか、身体の方はエンジン全開という感じです。でも、もう一つ大切なことは、人は身体だけが健康であってもしあわせとはいえません。心がさわやかにならないと、今日一日が楽しくありません。そこで、身体の体操のあとは、心の体操です。さあ、みなさん、ご一緒に、はじめることにいたしましょう。

あ、そうそう、第一体操にはいる前に、まずは準備体操を、少しやっておきましょう。皆さんは、今朝、このお寺へ来る時に、心の体操ってどんなんだろうと考えたりしませんでしたか?そうです。心の体操なんだからわずかな時間でも、しっかり修行にはげんで強い心、明るい心、豊かな心の持ち主になろう、と思った方もあるかもしれませんね。ところが、ここのお寺は、浄土真宗の恩寺です。座禅をしたり、精神修養の行をしたりという、あるべき姿を求めてがんばるところじゃなくて、他力本願の教えを聞いて、身のほどを知らさせていただくところなんです。

他力本願-知っていますか?よくプロ野球の実況なんかで間違って、タナボタ式に勝ったりしたときに使われていますが、そんなんじゃないんですよ。他力本願というのはね、この私を間違いなく仏にするというのが阿弥陀如来という仏様の本当の願いだ、ということなんです。

でもどうして、その仏様は、私がたのんでもいないのに、この私を仏にするなんておっしゃっているのかしら。ずいぶんお節介、私は私の思った通りにするんだから、放っといてちょうだい、と、いいたくもなります。そこで、勇気を出して、仏様に聞いてみましょう。仏様、あなたはどうして、この私を無条件で仏にするなんておっしゃるんですか?

すると、仏様はこうおっしゃいます。
「それはね、お前がうぬぼれのかたまりで、良いことをしてもすぐにテングになってしまうような、どうしようもない、欠点だらけの人間だからなんだよ」
ずいぶんきびしいおことばですが、これが阿弥陀如来という仏様なんです。つまり、この仏様は、いつでも、どこでも、この私に、身のほどを知れよ、とおっしゃっているんです。

さて、準備体操が少し長くなったようですが、仏教というとすぐに、あるべき姿を求めて精神修養に精進努力いたしましょうというものだと思われる方が多いので、そればかりではなくて、仏様を仰いで、身のほどを知りつつ、感謝の日々を送るという道もあるのだということを、少しわかっていただきたかったのです。それでは、準備体操はこのへんで-。


「お茶の間説法」(37話分)
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