お釈迦さまへのプレゼント/霊山勝海

4月はお釈迦さまのご誕生をお祝いする花まつりの月です。親鸞聖人のご誕生も4月1日と伝えられてきたのでしたが、太陽暦に変えるとき換算して5月21日に定められています。どちらも春の花の季節で、お祝にふさわしい彩りです。

浄土真宗では、お仏壇やお寺の内陣にお釈迦さまを安置しませんが、浄土真宗ほどお釈迦さまの精神を重視する宗旨はないのではないでしょうか。親鸞聖人はお正信偈に「如来所以興出世 唯説弥陀本願海」と述べられています。意味は、お釈迦さまの一生を総括して

釈迦如来がこの世にお出ましになったのは、ただ弥陀の本願の教えを説く一事でありました

とたたえておいでなのであります。阿弥陀如来に帰依し念仏申すことがお釈迦さまの精神に沿うことになる意です。

和讃には「釈迦弥陀は慈悲の父母 種々に善巧方便し われらが無上の信心を発起せしめたまひけり」とたたえて、浄土の弥陀とこの世に出現されたお釈迦さまが、協力してあらゆる手段を尽くして私どもをお育てくださったおかげで、いま仏法に遇うことができたと感嘆されています。よく知られています二河白道の譬では、釈迦如来はこちらから「行け、行け」とお勧めになり、向こう側からは弥陀如来が「安心してそのまま来い」とよんでいてくださると示されて、お釈迦さまの指示が、ただ弥陀仏への帰依であることを語られています。

お釈迦さまのご誕生をお祝いして甘茶をかけたり、お花をお供えしますが、誕生仏への最高のプレゼントは「弥陀の本願を聞いて」往生するにまちがいない身となることでありましょう。

寺報111号(平成16年4月1日)

空華忌に思う/利井明弘(寺報69号)
ご意見承りましょう/利井明弘(寺報70号)
御文章について/梯實圓(寺報71号)
永代祠堂経―前を訪へ―/高務哲量(寺報72号)
報恩講をむかえて/利井明弘(寺報73号)
「いのち」の風光/梯實圓(寺報74号)
ある救援活動/利井明弘(寺報75号)
無量光―共にかがやく―/天岸浄圓(寺報76号)
おそだて/高田慈昭(寺報77号)
恩に報いる/三嵜霊証(寺報78号)
拝啓 寺報善巧様/大江一亨(寺報79号)
雪山隆弘師と明教院僧鎔師/若林眞人(寺報80号)
俊之さんの思い出/龍嶋祐信(寺報81号)
往還回向由他力/那須野浄英(寺報82号)
一人か二人か/梯實圓(寺報83号)
混迷と苦悩の時代こそ/高務哲量(寺報84号)
住持/高田慈昭(寺報85号)
あなたの往生は間違いないか/利井明弘(寺報86号)
かがやき/山本攝(寺報88号)
無量寿のいのち/藤沢信照(寺報89号)
仏法を主(あるじ)とする/梯實圓(寺報90号)
生死出づべき道/高田慈昭(寺報91号)
生死の帰依処/騰瑞夢(寺報92号)
香積寺のことなど/山本攝(寺報93号)
横超のおしえ/高田慈昭(寺報94号)
永遠のとき/高務哲量(寺報95号)
必ず煩悩の氷とけ/藤沢信照(寺報96号)
報恩講/若林眞人(寺報97号)
非常の言/高田慈昭(寺報98号)
不自由ということ 不幸ということ/高務哲量(寺報99号)
お念仏の世界観/高田慈昭(寺報101号)
篤く三宝を敬え/天岸浄圓(寺報102号)
抜けるような青空のもと/山本攝叡(寺報103号)
善巧方便/騰瑞夢(寺報104号)
洗面器の底のさくらの絵/森正隆(寺報105号)
夢のお話/高田慈昭(寺報106号)
育ちざかり/那須野浄英(寺報107号)
こわいはなし/宗崎秀一(寺報108号)
報恩講について/梯實圓(寺報109号)
お釈迦さまへのプレゼント/霊山勝海(寺報111号)
前坊守様を偲ぶ/霧野雅麿(112号)
いずれの行もおよびがたし/藤沢信照(113号)
生死いずべき道/服部法樹(寺報114号)
あたたかなひかり/利井唯明(寺報115号)
季節の中で/山本攝叡(寺報117号)