拝啓 寺報善巧様/大江一亨

いつも御紙楽しみに拝読させて頂いております。お寺を囲む皆様が生き生きと輝いて見えます。それぞれの場所で智恵や力を出し合っておられる様子は、さながら「赤色赤光白色白光」で、凄いなあといつも感心しています。

私方は安芸門徒の土地柄ですが、寺の方はまどろみ続けています。越中門徒の皆様に笑われないようしっかりご法義の花を咲かさねばと思うのですが、如何せん住職の無能が災いしてなかなか善巧寺様のようにはいきません。そんな中、やっと定着してきた春の行事に初参式があります。

昔、お寺の若はんがお元気な頃、毎年5月の宗祖降誕会に講演に来て下さいました。「花の初まいり」のことも教えてもらいました。チューリップの花飾り?そんなの及びもつかないなあ、と迷いましたが、数年の後、できることからと思い立って初参式を始めました。昭和60年のことでした。初めてということもあって「昔の赤ちゃん」も混じり、ご祝儀気分もあってから65人の参式で、親御さん達も加わって大変な賑わいとなりました。沢山のお花と、65本の朱蝋の炎でとても華やかでした。終了後、若はん先生が「おい、あの人数はなんだ」と悪戯っぽい眼で言い、続けて「ようこそようこそ」と笑って、親指を突き出しました。褒めて貰った私はちょっと得意でした・・・。

62年を最後に講演して下さる若はん先生の姿はありません。けれども毎春、初参式の準備にかかる頃には、これは若はんの贈り物だったなあと振り返ります。若はんはいつも熱っぽく「寺よ、蘇れ」と語っておられました。「気づかずにいるけれど、沢山の贈り物のなかに私たちはいるんだよ」と教えて下さいました。

「大悲無倦常照我(だいひむけんじょうしょうが)」
私たちは阿弥陀如来さまからこの上ない願いを受けていることを忘れずに、お念仏申しながら歩んで行きたいものと思います。またいつか。

(寺報79号)

空華忌に思う/利井明弘(寺報69号)
ご意見承りましょう/利井明弘(寺報70号)
御文章について/梯實圓(寺報71号)
永代祠堂経―前を訪へ―/高務哲量(寺報72号)
報恩講をむかえて/利井明弘(寺報73号)
「いのち」の風光/梯實圓(寺報74号)
ある救援活動/利井明弘(寺報75号)
無量光―共にかがやく―/天岸浄圓(寺報76号)
おそだて/高田慈昭(寺報77号)
恩に報いる/三嵜霊証(寺報78号)
拝啓 寺報善巧様/大江一亨(寺報79号)
雪山隆弘師と明教院僧鎔師/若林眞人(寺報80号)
俊之さんの思い出/龍嶋祐信(寺報81号)
往還回向由他力/那須野浄英(寺報82号)
一人か二人か/梯實圓(寺報83号)
混迷と苦悩の時代こそ/高務哲量(寺報84号)
住持/高田慈昭(寺報85号)
あなたの往生は間違いないか/利井明弘(寺報86号)
洗面器の底に・・・/森正隆(寺報87号)
かがやき/山本攝(寺報88号)
無量寿のいのち/藤沢信照(寺報89号)
仏法を主(あるじ)とする/梯實圓(寺報90号)
生死出づべき道/高田慈昭(寺報91号)
生死の帰依処/騰瑞夢(寺報92号)
香積寺のことなど/山本攝(寺報93号)
横超のおしえ/高田慈昭(寺報94号)
永遠のとき/高務哲量(寺報95号)
必ず煩悩の氷とけ/藤沢信照(寺報96号)
報恩講/若林眞人(寺報97号)
非常の言/高田慈昭(寺報98号)
不自由ということ 不幸ということ/高務哲量(寺報99号)
お念仏の世界観/高田慈昭(寺報101号)
篤く三宝を敬え/天岸浄圓(寺報102号)
抜けるような青空のもと/山本攝叡(寺報103号)
善巧方便/騰瑞夢(寺報104号)
洗面器の底のさくらの絵/森正隆(寺報105号)
夢のお話/高田慈昭(寺報106号)
育ちざかり/那須野浄英(寺報107号)
こわいはなし/宗崎秀一(寺報108号)
報恩講について/梯實圓(寺報109号)
お釈迦さまへのプレゼント/霊山勝海(寺報111号)
前坊守様を偲ぶ/霧野雅麿(112号)
いずれの行もおよびがたし/藤沢信照(113号)
生死いずべき道/服部法樹(寺報114号)
あたたかなひかり/利井唯明(寺報115号)
季節の中で/山本攝叡(寺報117号)