いよいよ蓮如上人500回遠忌が来年に迫った。各地でまたマスコミ等で蓮如上人讃仰の気運が高まりつつある。しかしこれを単なる一過性のムードに終わらせてならないのはいうまでもない。
21世紀を目前にした平成の世の我々は、蓮如上人の生きられた中世と共通する混迷の時代を生きているとはよくされる指摘である。政治・経済・教育・医療・地球環境問題などの各分野が抱える諸問題は、戦後50年を経て、時代が大きな転換期にさしかかっていることを物語っている。そしてひとり宗教だけがその埒外に安閑としていられる時代ではない。ただしこのことは真実の宗教の果たす役割の重要性を意味しこそすれ、伝統宗教の存在意義が終わったなどというのは見当違いである。
我々の御門主は、昭和55年、第24代の本願寺門主を継職されるに当たり、広く内外に「教書」を発表、決意のほどを明らかにされた。その「教書」はこう結ばれている。
念仏は、私たちがともに人間の苦悩を担い、困難な時代の諸問題に立ち向かおうとするときいよいよその真実をあらわします。私はここに宗祖親鸞聖人の遺弟としての自覚のもとに、閉ざされた安泰に留まることなく、新しい時代に生きる念仏者として力強く一歩をふみ出そうと決意するものであります。
時代の混迷と苦悩が深ければ深いほど、お念仏のみ教えは私たちに何が真実かを訴えかけてくる。お念仏とはそういうものなのだ。蓮如上人が目指し、私たちに示されたこと、すなわちお念仏を究極のよりどころとしてこの人生を生きるという一点を私達もkっちりと見据えておかなければならない。それが混迷深き時代を生きる我々に対する蓮如上人の生涯をかけられたメッセージである。
(寺報84号)
・空華忌に思う/利井明弘(寺報69号)
・ご意見承りましょう/利井明弘(寺報70号)
・御文章について/梯實圓(寺報71号)
・永代祠堂経―前を訪へ―/高務哲量(寺報72号)
・報恩講をむかえて/利井明弘(寺報73号)
・「いのち」の風光/梯實圓(寺報74号)
・ある救援活動/利井明弘(寺報75号)
・無量光―共にかがやく―/天岸浄圓(寺報76号)
・おそだて/高田慈昭(寺報77号)
・恩に報いる/三嵜霊証(寺報78号)
・拝啓 寺報善巧様/大江一亨(寺報79号)
・雪山隆弘師と明教院僧鎔師/若林眞人(寺報80号)
・俊之さんの思い出/龍嶋祐信(寺報81号)
・往還回向由他力/那須野浄英(寺報82号)
・一人か二人か/梯實圓(寺報83号)
・混迷と苦悩の時代こそ/高務哲量(寺報84号)
・住持/高田慈昭(寺報85号)
・あなたの往生は間違いないか/利井明弘(寺報86号)
・洗面器の底に・・・/森正隆(寺報87号)
・かがやき/山本攝(寺報88号)
・無量寿のいのち/藤沢信照(寺報89号)
・仏法を主(あるじ)とする/梯實圓(寺報90号)
・生死出づべき道/高田慈昭(寺報91号)
・生死の帰依処/騰瑞夢(寺報92号)
・香積寺のことなど/山本攝(寺報93号)
・横超のおしえ/高田慈昭(寺報94号)
・永遠のとき/高務哲量(寺報95号)
・必ず煩悩の氷とけ/藤沢信照(寺報96号)
・報恩講/若林眞人(寺報97号)
・非常の言/高田慈昭(寺報98号)
・不自由ということ 不幸ということ/高務哲量(寺報99号)
・お念仏の世界観/高田慈昭(寺報101号)
・篤く三宝を敬え/天岸浄圓(寺報102号)
・抜けるような青空のもと/山本攝叡(寺報103号)
・善巧方便/騰瑞夢(寺報104号)
・洗面器の底のさくらの絵/森正隆(寺報105号)
・夢のお話/高田慈昭(寺報106号)
・育ちざかり/那須野浄英(寺報107号)
・こわいはなし/宗崎秀一(寺報108号)
・報恩講について/梯實圓(寺報109号)
・お釈迦さまへのプレゼント/霊山勝海(寺報111号)
・前坊守様を偲ぶ/霧野雅麿(112号)
・いずれの行もおよびがたし/藤沢信照(113号)
・生死いずべき道/服部法樹(寺報114号)
・あたたかなひかり/利井唯明(寺報115号)
・季節の中で/山本攝叡(寺報117号)