いろもなし かたちもましまさず
しかれなこころもおよばず ことばもたえたり
唯信鈔文意を講義された山本仏骨和上が次のようにおっしゃいました。
「いろもなし、かたちもましまさず」とは、どのようないろにも、どのようなかたちにでもなって、私の思議をこえて働いてくださるというお言葉です。
ありがたいお言葉であると味わうことです。仏法を聴聞することが、改まってすることでなく、私の上にはたらいてくださっている如来様に遇うことだと味わうからです。如来様のはたらきに遇うことはお育てにあずかっている私に気付かせていただくということです。今、如来様のお育ての中で正しく生かされている、如来様に育てられている“育ち盛り”の私なのです。
如来様と私の関係を、機法一体と言われます。機は法によって育てられるチャンス(絶好の機会)で、法によって育てられるしくみであるといわれました。如来様に育ててくださいと願うのではなく、すでに如来様のお育てにあずかっているのです。私のほうから知ることもなく、いつのまにか(十劫の昔から)不可思議のうちにお育ていただいています。あり難いことに私達は、春夏秋冬、味の濃淡、風呂の湯加減など身の全体が、“聞く”機能を持っています。この機能が、如来様のお育てを深く味わわせていただくのです。
私は、年をとること、病気になること、いのち終わることをつまらなく思いますが、念仏の衆生とお育ていただいている中に仕組まれて、生かされていること、聞いて味わうことのできる今チャンスであると思うのです。
(寺報107号)
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