最近、大平光代さんの「だからあなたも生き抜いて」という本を読みました。
著者は中学二年の時に、いじめを苦にして自殺を図り、その後、非行に走って、十六歳の時には極道の妻となり、背中に刺青を入れてまで、その世界で生きていこうとします。しかし、結局そこでも自分の生きる場所が見つからず、離婚してスナックで勤めることになります。
どん底まで落ちた彼女の人生に光が差すときがやって来ました。それは後に養父となる大平浩三郎さんとの出会いでした。それからの彼女の努力は並大抵のものではありません。なにしろ、中卒の身ながら司法試験に一発合格という快挙をやってのけるのですから。しかし、その努力は、どんな時でも優しく包んでくれたお祖母ちゃん、それから大平さんはじめ、たくさんの人たちの温かい心に支えられてのものだったのです。
無碍光の利益より
威徳広大の信をえて
かならず煩悩のこほりとけ
すなはち菩提のみづとなる
と親鸞聖人は『高僧和讃』に示されています。温かい心が通わなければ、人の心は凍ってしまいます。しかし、凍った心が溶けさえすれば、素晴らしい悟りの水となることを見抜かれた阿弥陀さまは、私たちをお慈悲の心で温かく包んでくださるのです。
人は皆、お慈悲の温もりに触れたとき、どんな状況の中でも、喜びと感謝の心を持ちながら、力強く生き抜いていくことができるということを、大平さんの本を読みながら、深く心にかみしめさせてもらいました。
(寺報96号)
・空華忌に思う/利井明弘(寺報69号)
・ご意見承りましょう/利井明弘(寺報70号)
・御文章について/梯實圓(寺報71号)
・永代祠堂経―前を訪へ―/高務哲量(寺報72号)
・報恩講をむかえて/利井明弘(寺報73号)
・「いのち」の風光/梯實圓(寺報74号)
・ある救援活動/利井明弘(寺報75号)
・無量光―共にかがやく―/天岸浄圓(寺報76号)
・おそだて/高田慈昭(寺報77号)
・恩に報いる/三嵜霊証(寺報78号)
・拝啓 寺報善巧様/大江一亨(寺報79号)
・雪山隆弘師と明教院僧鎔師/若林眞人(寺報80号)
・俊之さんの思い出/龍嶋祐信(寺報81号)
・往還回向由他力/那須野浄英(寺報82号)
・一人か二人か/梯實圓(寺報83号)
・混迷と苦悩の時代こそ/高務哲量(寺報84号)
・住持/高田慈昭(寺報85号)
・あなたの往生は間違いないか/利井明弘(寺報86号)
・かがやき/山本攝(寺報88号)
・無量寿のいのち/藤沢信照(寺報89号)
・仏法を主(あるじ)とする/梯實圓(寺報90号)
・生死出づべき道/高田慈昭(寺報91号)
・生死の帰依処/騰瑞夢(寺報92号)
・香積寺のことなど/山本攝(寺報93号)
・横超のおしえ/高田慈昭(寺報94号)
・永遠のとき/高務哲量(寺報95号)
・必ず煩悩の氷とけ/藤沢信照(寺報96号)
・報恩講/若林眞人(寺報97号)
・非常の言/高田慈昭(寺報98号)
・不自由ということ 不幸ということ/高務哲量(寺報99号)
・お念仏の世界観/高田慈昭(寺報101号)
・篤く三宝を敬え/天岸浄圓(寺報102号)
・抜けるような青空のもと/山本攝叡(寺報103号)
・善巧方便/騰瑞夢(寺報104号)
・洗面器の底のさくらの絵/森正隆(寺報105号)
・夢のお話/高田慈昭(寺報106号)
・育ちざかり/那須野浄英(寺報107号)
・こわいはなし/宗崎秀一(寺報108号)
・報恩講について/梯實圓(寺報109号)
・お釈迦さまへのプレゼント/霊山勝海(寺報111号)
・前坊守様を偲ぶ/霧野雅麿(112号)
・いずれの行もおよびがたし/藤沢信照(113号)
・生死いずべき道/服部法樹(寺報114号)
・あたたかなひかり/利井唯明(寺報115号)
・季節の中で/山本攝叡(寺報117号)