住職とは住持の職分ということで、このことばは天親菩薩の「浄土論」にでてくる「正覚阿弥陀 法王善住持」の文によっています。安楽浄土は阿弥陀仏の善力のためによく住持せられるという意味です。住持ということは、住の字は不異不滅(変わらない、滅びない)をあらわし、持の字は不散不失(念持して失わない)のこころです。
たとえば、不朽薬(ふきゅうやく)を種子に塗ると、水の中にあってもくさらず、火の中にあっても焼け焦がされない。また、住持という意味を、「黄鵠、子安を持てば、千齢かへりて起る」とあり、子安にたすけられた鶴が、子安の死後3年間その墓の上で彼を思って鳴きつづけ、鶴が死んでも子安はよみがえって千年の寿命をたもった、という中国の故事をもって曇鸞大師が説明されています。それは、鶴がいのちの恩人である子安を思う心のつよさを住持にたとえられたものでしょう。
寺の住職とは、ただ寺に住居しているという意味ではなく、仏法(本願念仏)を中心に、聞法の道場である寺院本堂を護持し、寺を支えられる御同朋御同行とともに、どのような世間の風雪にあっても、よく如来の教法を念持していくという尊くもきびしく、有り難い法職のことであります。
このたび、善巧寺の新発意さんが、学行を身につけて新しく住職の任を継職せられることはまことに慶賀にたえません。亡き前住さま、前々住さまも、安養の浄刹よりいかばかりかおよろこびのことでありましょう。どうか、前住、前々住二師のご苦労をしのび、また、はるかに空華先師の御遺調をついで寺門につくされんことを念じてやみません。
(寺報85号)
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